合作小説を楽しく作っていきましょう。
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息が白い……。歩くたびに聞こえるのは霜柱が崩れる音。
鳥居の下から下界を見渡す。湿った地面の上に立つ人影がゆらゆらと動く。
ここは良い。僕の過去を知るものは誰一人としていない。誰も僕を恐れない、裏切らない。
北風が吹いた。思わず身を縮込める。
この前も戦争で手柄を立てて来ると言い村の若者達が戦地へ向かっていった。故郷に錦を飾ってやると言って。しかし、戦争という暴風の前に人間の命の灯は無力だ……。すぐにかき消されてしまう。
僕か? 僕は行かない。行っても何も変わらないだろ? たった一人の人間が戦地に赴いたって何も変わらない。ただ、魔術師の場合は除いてだが。
戦争をすれば何が変わる? 誰かの懐が潤い、誰かの灯が消える。そして、平和の大切さを知る。
しかし、人は人間はッ! 常に誰かのものを欲し、奪おうとする。この心が消えない限り戦争は繰り返されるのだ。
だから、僕は赴かない。目を閉じる、耳を閉ざす。
己の欲心を抑えるために、消すために……。
日が高く上った。
霜柱が溶け、地面が濡れる。
でも、まだ吐く息は白い。
どこかで命が生まれ、散ったであろうこの世界に……。
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